雑記帳CHiSAToY夜話99年3月(1)
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99年3月2日

 引っ越し準備の最中に吸い込んでしまったホコリがよほどに悪かったのか、それともそのホコリが花粉症を呼び込んだのか、鼻は詰まるは、鼻水は出るは、頭が痛い。そんな状態だから、昨晩は家へたどり着いたらぐうとも言わずに寝てしまった。

 一晩開けて、今朝。どうにも違和感があり、鏡を覗き込んだら驚いた。顔、ことに瞼がすっかりと腫れ上がっている。うっとうしいことこの上なかったが、出張の準備もしなければならない。嫌々ながらも外出した。

 僕自身は、いやいやながらも、腫れた顔と瞼をサングラスで隠しながら外出できたが、僕の数倍、いや比較もできないほどに酷く顔を腫らし、外出はおろか起きあがることもできなかっただろう男が思い当たる。昨晩(3.1)、後楽園ホールで天龍選手と対戦したサンボ浅子である。

 天龍選手とサンボ浅子が対戦した天龍・二瓶・中牧 対 荒谷・奥村・サンボ浅子の試合は、荒谷選手が歩くときにすら脚を引きずらざるを得ないほどに右膝を痛めているために、リング上でもダイナミックな動きを見せることもできず、またほかの二瓶、中牧、奥村、そしてサンボ浅子らもWARの売りとも言えるスティッフなダイナミズムを見せるにはそれぞれが役者不足な感があり、結局天龍選手のサンボ浅子への残酷なまでの攻め口ばかりが印象に残ってしまった。

天龍選手のキックは、バルコニーにいてさえもはっきりとそれとわかる音を立ててサンボ浅子の頭部を連打した。
▲天龍選手のキックは、バルコニーにいてさえもはっきりとそれとわかる音を立ててサンボ浅子の頭部を連打した。

 天龍選手がサンボ浅子選手の頭部を蹴りつける音が次から次に響く。その音はバルコニーからリング上を見つめていた僕の耳にもはっきりと届いた。正しく「ボコボコ」を絵に描いたような有様である。そして試合後立ち上がれないサンボ浅子に「プロレスラーの恥」との言葉を投げかけ、容赦のないイスの嵐。

 千葉大会でも感じたことだが、このシリーズの天龍選手は"怖い"、とてつもなく怖い。しかも、その怖さはプロレスに対する打ち込みようが発露した「カラッと激しい」と言うよりも、なにか陰湿な感じのする怖さと感じてしまい、気味の良いものではなかった。たとえ、サンボ浅子がきっちりとレスリングをすることができなくて、"試合"として成り立たせるためにはああするしかなかったのだとしてもだ。

 なんとなく、90年初めの、全日本マット最終盤の頃の天龍選手を思い出した。あの閉塞感、イライラとした周りも含めて全てがバタバタとした感じである。

 この翔舞'99は文字通りWARにとって勝負のシリーズである。"大会場"である横浜文化体育館大会がある、松本総合体育館では年に1、2度しか行わないJ1選手権もある。それでいながら、J1への挑戦者であり、WARのエース・荒谷選手は歩くこともおぼつかないケガ人である。これほど閉塞した状況はあるだろうか

 次回は大仁田が参加する横浜大会である。事前報道は天龍-大仁田の確執を報じている。確かに興味はこの一点に絞られるだろう。でも、僕はただ単に「カラッと激しい」レスリングを見せて欲しい。それだけだ。

石井のメジャー初対戦は、相応の力量差をまざまざと見せつけられもした。
▲石井のメジャー初対戦は、相応の力量差をまざまざと見せつけられもした。

 メインイベントで行われた安良岡・石井 対 大谷・高岩のインターナショナルタッグ戦も、実のところは力の差をあれだけ見せつけられると天龍-サンボ浅子のような後味を感じながら後楽園ホールを後にしたとしてもおかしくはなかった。

 王座を奪いながらも安良岡選手は石井選手を促して、二人して退場して行く大谷選手と高岩選手へ深々と頭を下げた。ある意味においては、あれがこの試合の全てであったと見る人もいるだろう。宜もない。

 しかし、僕はこの試合をある一点において絶賛する。あれがこの試合に対する僕の評価を決めた。それは石井選手のある切り返しだった。

 大谷選手は憎々しげな、対戦相手を小馬鹿にしたような試合運びをする。いわゆる"顔面ウォッシュ"や顔面の踏みにじりはそれを構成する要素として必ず試合に現れる。昨年何度か行われた安良岡選手との対戦でもそれらは見られた。

 昨年何度も見せられた大谷選手が安良岡選手の顔を踏みにじる様、そしてなによりそれを安良岡選手が"甘んじて"受けているように見えてしまったことは毎回WARファンに歯がゆい思いをさせ続けてきたと思う。その度僕は「ああ、あのかかとを、あのアキレス腱を"キュッ"と極めてしまってはくれないものだろうか。」と思ってきた。

 今回のIJタッグ戦でも大谷選手は対戦相手の顔を踏みにじりに出た。今回は石井選手の顔をだ。「ああ、またしても」。僕がそう想い始めたとき、石井選手は大谷の足を取ってねじった。ねじったのだ。

 かかとを、アキレス腱をキュッと極めるなんて訳にはいかなかったものの、確かに顔に載せられた大谷の脚を石井選手はねじって、大谷をどけた。石井選手は甘んじなかったのだ。僕はこの一点においてこの試合を記憶に残す。IJタッグと言うベルトはこの一点においてのみ与えられたとしても、過分ではないと言い切ろう。

 「それは石井選手のキャリアがまだ短くて"いろいろ"わかっていないところが多いからさ」と言う人もいるかも知れない。それならば石井選手がそんな"いろいろ"なんかブッ飛ばしてしまえばいいのだ。そうじゃないか。


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