![]() | 99年4月(3) |
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出勤前のひとときである。今日も今日とて満員の東急田園都市線に乗って代々木の事務所まで出かける。東急田園都市線というのが、全くのところ混み混みの路線であり、乗ってしまえば最後本を読むことさえはばかられると言う塩梅である。本すら読めないくらいだから、当然キーボードを叩くようなこともできない。
だからと言ってボウーッと周囲の乗客に体を押しつぶされるままになっているのもしゃくなので、もっぱら通勤の列車内では"ネタを喰う"ことにしている。"裏をくう""イワシを食す"に続いて今日も"喰う、食べる"シリーズなのである。
列車の中でもまれながら、「さあ今度のChisatoy夜話がどういう展開になるのか。」とか「次に必殺技大鑑の写真を再スキャンしたときには『エレキング』(いまATOK12を使ってエレキングを入力したら『ら抜き表現』と叱られてしまった)を使って筋立てしよう。」とかまあしかめっ面している割には内面ではしょうもないことを考えて、今後のレスリングハイ運営に備えているのである(なにをご大層な)。
こうした堅く言えば企画立案、平たく言えば次のネタを考えることを僕は"ネタを喰う"と言っているのだが、これは一般的な言葉なのだろうか。僕はこの"ネタを喰う"という表現を大学時代に所属していたレスリングファンクラブの酒席で耳にしてからこれを使っているのだが。
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| 吉野 正洋 |
この男が、酒席でたまさかに言葉を発していないと「おまえ、今ネタ喰っていただろう。」とか「人の話をじっと聞いて、ネタ喰っていたろう。」とか突っ込みを入れるのが、酒席での定番ムーブであったわけである。それで、爾来僕は"ネタを喰う"との表現を使っているのだが、これは一般的に通用する言い回しなのか?
さて、吉野はレスリングファンクラブに所属していたが、ちーっともレスリングファンじゃなかったのだ。彼の同級生がレスリングファンクラブの入会申し込みに行くから、ちょっとつきあってくれよと言うので一緒にやってきて、同級生はファンクラブに残らなかったが、吉野はなぜか居着いてしまったのである。ちーっともレスリングファンじゃないのにだ。
レスリングファンじゃなかった吉野も、レスリングファンに混じって行動し、さらには当時はまだまだ普及していなかったビデオデッキを所有していたこともあって、彼の部屋に押し掛けてはレスリングのビデオテープを見ていたものだから、ちょっとはレスリングを見るようになったりもした。
ちょっとはレスリングを見るようになったのだから、サークルのファンジンにもなんか書いてみてくれよと言うことで、吉野に原稿を書いてもらったら心に残る名勝負・名シーンとしてゴージャス・ジム・ガービンの来日第一戦の対石川孝志(あのころは敬士だったかもしらん)戦を持ち出してきた。あの試合のフィニッシュホールドとなった"安全式パワーボム"とそれに至るまでの流れを一度読んだら、忘れられないくらいのおもしろさで書いてきたのだ。吉野恐るべし。このことを通勤列車の中で"ネタを喰って"いるときに思い出したので、早速ここに採録して広く紹介しようと思ったのだが、うちの本棚に見あたらないのである。なんだ、残念。今回喰ったネタも結局こうして中途半端に終わるのか。
と、通勤列車の中で喰ったネタも、そのほとんどは結実しないままに終わるという見本を見せて、この話は終わるのであった。ちょうど時間となりました、それでは"ネタを喰う"ために通勤列車に乗りに行ってまいります。みなさん、ごきげんよう。